いつかあなたに還るまで

重い足取りで進む隼人の前に徐々に人影が見えてくる。前方から近づいてくるその影を足を止めてぼんやりと見つめていると、やがて正面から視線のぶつかり合った二人はそれぞれに大きく目を開いた。

「宮間さん…」
「…霧島様…」

西園寺の大きなお邸の前で数メートルの距離を空けて対峙する。
彼女は志保の腹心中の腹心だ。きっと何故自分達が別れることになったのか、たとえ志保が真相を話していないのだとしても彼女なら気付いているだろう。

殴られないまでも、すぐに怒りをぶつけられることを覚悟していたが、その予想に反して宮間は静かに隼人を見つめていた。
だが態度に出さないだけでここにいること自体を不快に感じているに違いない。

「あの、宮間さん、私は…」
「立ち話もなんですから。よろしかったら少し上がっていかれませんか?」

「____え?」

聞き間違い、かと思った。

「どうぞ、こちらへ」
「……」

導くように前を歩き始めた宮間に、自分がどう動くべきかと一瞬迷う。
だがたとえこの後どんなことが待ち受けていようとも、全て甘んじて受け入れる。そう覚悟を決めると、隼人もその後に続いた。

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