いつかあなたに還るまで
「こちらどうぞ」
「…ありがとうございます」
コトリとティーセットを置くと、テーブルを挟んだ向かいに宮間も腰を下ろす。幾度か通されたことのある広い客間にいるのは向かい合う二人だけ。
こうして邸の中に招き入れられたものの、ここに志保が現れる気配が全くないことが、彼女が何を言わんとしているのかを全て表しているような気がして…ずしりと心が重くなった。
…だがそれでも。
自分には言わなければならないことがある。
「……宮間さん、」
「あなたがこのところずっとこちらを尋ねてきていたのは知っていました」
「____え?」
被せるようにして告げられた事実に驚きを隠せない。
「庭師が正門の前に立つあなたを何度も見かけているんです。その度に声を掛けるべきか迷っていたようですが…あなたのあまりにも真剣な様子に、第三者が口を出すべきではないと判断していたようです」
「そう、でしたか…」
とっくに知られていたなんて。
だが普通に考えればそうだろう。ただでさえセキュリティの厳重なこの邸なら、庭師に気付かれなくとも監視カメラなどに映っていても何の不思議もない。
冷静に考えれば誰でもわかることにすら気付かず、来る日も来る日も訪れては何もせずに帰って行く。そんな男はさぞかし無様に映っていたことだろう。