いつかあなたに還るまで
ゴオオオーーッと轟音が響く中、両手で握りしめた写真を見てクスッと笑いが零れる。
施設の子ども達を中心に開いてくれた送別会。その最後に撮った写真には、中心でにっこりと笑う志保を押し潰さんばかりの勢いで取り囲む子ども達が写っている。満面の笑みを浮かべている子、ほんの少し寂しそうに微笑んでいる子、涙も鼻水も流し放題で大号泣している子。その表情はまさに十人十色。
けれど、それぞれがありったけの想いを込めて志保を送り出そうとしてくれている。その気持ちは痛いほどに伝わってきた。
上昇していく機体と共にどんどん小さくなっていく大地を見つめながら、長いようであっという間に過ぎた五年を思う。
少しは人間として成長できたのだろうか?
自分ではわかりようもないけれど、少しでもそう思ってもらえる自分になれていたらと心から思う。この五年という月日を、決して無駄にしないためにも。
子ども達の顔をそっと指でなぞる。
次に会える日がいつになるかはまだわからない。
けれど、彼らの未来が幸せなものでありますように。
願うことはただ一つ、それだけだ。
その時には、笑顔で会えると信じて。
「本当にありがとう…。また、ね…」
別れと再会の誓いを胸に、志保は写真をそっと中にしまい込んだ。