いつかあなたに還るまで

「…あの時約束したでしょう?」
「え?」
「…あの日。私は本当なら一人で背負うべき罪をあなたにも背負わせた。重い重い…十字架を。だから今後、宮間の言うことならどんなことでも受け入れるって決めたの」
「志保様…」

そのまま互いに無言のまま見つめ合う。
先に動いたのは志保の方で、ふっとその目が優しく弧を描いた。

「心配しないで。今はもう弱いだけの私じゃない。何も出来ない、ただ流されるだけの自分から卒業するためにこの五年という日々を過ごしてきたの。だから相手がどんな人であろうと、きちんと自分自身をもって生きていく」
「……」
「それに宮間のことだもの。なんだかんだ言って、本当にだめだと思う相手ならどんな手を使ってでも阻止しているでしょう?」
「…え?」
「宮間はいつだって私の幸せを第一に考えてくれてる。それがわかるからこそ、私は安心してその日を迎えることが出来る。…きっと幸せになってみせるから」
「志保様…」

そう宣言した志保からは見たこともないような自信が漲っている。
目の前にいるのは、同じ人物であって同じじゃない。
…あの悲しみはこれからも決して彼女の中から消えることはないだろう。
それでも、その悲しみも全て背負った上で今の彼女がいる。

あの時よりもずっとずっと強く、美しくなって。

目を閉じて感慨深く何度も頷くと、やがて宮間も安心したように微笑んだ。

「…そうですね。今の志保様なら私も安心して送り出すことができます」
「やだ、宮間ったらすっかり母親みたいね」
「…せめて姉と言ってもらえますか?」
「えっ? ふふっ、そうね。ごめんなさい」

ふふっと笑い合うと、それから邸に着くまでの間互いにこの五年間の話が尽きることはなく、車内にはいつまでも笑い声が響きわたった。

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