いつかあなたに還るまで
「君を見た時に今まで感じたこともないような不思議な感覚に陥った。それを言葉で説明するのは難しい。じゃが、抗えない何かが君にはあったんだ。長年生きてきて、そんな経験は初めてだった。それがこうして今に繋がっているのなら…儂の目もまだまだ腐ってはおらんようじゃな」
そう言って不敵な笑みを浮かべる昌臣に、隼人も背筋が伸びる思いだった。
「…あの頃の私は、人を踏み台にしてのし上がることしか頭にありませんでした。そんな会長の思いすら、踏みにじっていたんです」
「わっははは! そんなことは最初からわかっておった。だてに長いこと生きてないからな。ましてやこんな立場にいれば、相手が腹の中でどんなことを考えておるかぐらい想像がつくわい」
それに驚いたのは志保の方だ。
祖父は最初からわかっていて、それでも自分達を引き合わせたのだと。
「じゃが君の瞳の奥はいつも悲しそうに揺れていたからな。どうしても真の悪人だとは思えなかった。君を見ていると不思議と志保の顔が浮かんでは消えた。その理由は自分でもわからなかった。だからこそ会わせようと思えたんだ」
「お祖父様…」
す…と隼人が深々と頭を下げる。
「本当に、会長には感謝してもしきれないほどの感謝の気持ちでいっぱいです。こんな私を見つけ出してくださったこと、あの日の出会いに、奇跡に、これから先もずっと感謝し続けて生きていきます。…そして」