いつかあなたに還るまで
体を起こすと、隣に立つ志保の左手を取り、あらためて昌臣へと向き直る。
言葉などなくとも、それが伝わった志保もぴんと背筋を伸ばす。
「これから先、日々を精一杯生きていくことで感謝の気持ちを伝え続けていきます。そんな私達を、どうかこれからもずっと見守っていてください。よろしくお願いします」
「お願いします」
寄り添うように頭を下げた姿は、まるで長年連れ添っている熟年夫婦の風格さえ漂っていた。そんな孫の姿におかしくなると同時に、その後ろに娘の幻影を見た気がした。
あぁ、娘の魂はここに生きているのだと。
「何度も言うがそうあらためられると先が短い気がしてくるわい。いつまでも堅苦しいのは肩が凝ってかなわん。ほら、用が済んだならさっさと行った行った。儂は忙しいんじゃからな」
しっしと虫を追い払うかの如く手を振る昌臣に、志保と隼人は一瞬目を丸くした後、顔を見合わせて笑った。
過去を変えることはできない。
けれど、新しい未来を築いていくことはできる。
その幸せを、噛みしめながら____