いつかあなたに還るまで
「五年前、霧島様は会長の元を訪れ、膝をついて謝罪されていました」
「え…」
それは、つまり…
「私の話を聞いたこととは関係なく、いずれ彼はそうされていたでしょう。何ヶ月もの間、一日も欠かすことなくこの邸へと足を運ばれていたのですから」
まだ昌臣と話がしたいという隼人を残し先に自室へと戻った志保に、宮間が五年前の真実を語り始めた。
「当時の彼は、おそらく心からの謝罪をした後は志保様の幸せを願って身を引く選択をされていたと思います。志保様のために自分ができる唯一のことはそれしかないと。本当はどんなことをしてでも志保様のお傍にいたいという想いは、永遠に胸の奥底にしまい込んで」
「…」
「ですが私から話を聞いたことで、彼の中の何かが変わった。志保様がどれだけの深い愛をもって彼から身を引いたのか、それがわかったからこそ、自分が同じ事をするのは違うと気付かれたのでしょう。別れて苦しむ人生より、共に苦しむ人生の方が何倍も幸せなのだと。…もちろん苦しませるような未来にするつもりなど毛頭ないでしょうが」
ふふっと笑っているが、志保はそんな余裕すらない。
一言一句、全てを聞き逃してなるものかと、真剣そのものだ。
「…志保様との約束を破ってしまったことは、本当に申し訳ないと思っています。最後の最後まで迷いましたが、どうしても、霧島様には全てを知っていてもらいたいと思いました。たとえどんな未来になろうとも、それが志保様にとっても、あの方にとっても必要なことだと思えてならなかったのです。…本当に、申し訳ありませんでした」
「や、やだ! 頭なんて下げないで! ねぇ、宮間っ!!」
深く腰を折った宮間の体を必死で揺らして起こす。