いつかあなたに還るまで
「…そしてもう一つ。あの日以降、彼は志保様のご両親のお墓に足を運ぶようになりました」
「…え?」
「命日はもちろんのこと、時間の許す限り月命日も花を手向けに行っているようです。そして…お子様の命日にも」
「…!!」
驚き言葉も出ない志保は、両手で口を押さえたまま目を見開かせた。
「う、そ…」
「嘘ではありません。お子様が天国へと召されたその日、必ず会いに行かれています。子どもが好きそうな元気な色の花束と、お菓子や小さなおもちゃがいつも添えられていますから」
そう言って立ち上がると、宮間が何かの箱を箱を手に戻ってきた。尚も驚愕している志保にその中身を見せた途端、たちまちその瞳から大粒の涙が溢れ出した。
「う…そ、で、しょう…?」
中に入っているもの。それは赤ん坊用の靴下や鈴のおもちゃ、絵本。
赤ん坊のものから幼児向けのものまで、成長に合わせた小物がいくつも並んでいた。
信じられなくて、溢れる涙が後を絶たない。
「私が行ったときには必ずこれらが置かれていました。ずっとそのままにして雨風にさらすわけにもいかないので、彼には内緒でこうして一つの箱に入れさせてもらっていたんです。…いつか、志保様と一緒に供養できる日が来ると信じて」
「みや、ま…」
「この子は本当に幸せ者ですね。両親から、こんなにも愛されて」
「…っ」
その一言に、辛うじて繋がっていたダムが完全に決壊した。