いつかあなたに還るまで

頭から水を掛けられたような気分だった。
自分の幸せはすなわち志保の幸せ。それ以外のことなど考えたこともなかった。命を吹き込んでくれたこの方のために全てを捧げても構わないと、ずっとそう思って生きてきた。

「宮間のように素敵な女性を幸せにしたいって思う人はたくさんいる。その中に宮間もそう思える人がきっといるはずよ。今まで私にかかりきりだった時間を、これからは自分のために過ごして欲しいの。そうしていつか、あなたと家族ぐるみのお付き合いをしていきたい」
「かぞ、く…?」
「えぇそうよ。私の家族と宮間の家族。主従関係なんかじゃなくただの友人として、これからも先ずっとあなたと寄り添っていきたい。お祖父様だってきっとそう願っているはずよ」
「……」

家族。友人。
もうずっと自分には関係のないと思っていた言葉。
それを、これからは自分が…?

「どちらがより幸せになれるか競争しましょう? 私、絶対に負けないから!」

力強く宣言した志保の左手には直視できないほど眩しい輝きがある。
しばし呆然としていた宮間も、やがて何かを噛みしめるように何度も何度も頷くと、負けじと強い眼差しで志保を見据えた。

「…だいぶ私の方が出遅れてますからね。相当気合を入れないといけませんね」
「そうよ。本気になった宮間はすごいんだから!」
「ふふっ。その期待を裏切らないよう、精進してまいります」

仰々しく頭を下げると、どちらからともなく盛大に吹きだした。


これから新たに始まっていく未来に、期待に胸を躍らせながら____

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