いつかあなたに還るまで
「…私ね、どうして自分の親はあんななんだろうって何度も思った。大きくなればなるほど、その思いは強くなって。…でもね、不安や不満を口にする度に、おにいちゃんが言ってくれたんだ。自分もずっと同じように思って生きてきたけど、心の底から大切にしたいと思える人に出会えた。その人に出会った瞬間、それまでの苦労も悲しみも全部吹っ飛んでしまうくらい、その出会いは自分を変えるんだって」
「えっ…?」
驚く志保の手を、瑠璃はへへっと照れくさそうに握りしめる。
「…だからね、私もいつかそういう人に会える日を信じて、毎日を楽しもうと思って。二人が私の憧れでもあり、目標なの。私だけじゃないよ、きっとここにいる子の多くが同じように思ってる」
「るぅちゃん…」
瑠璃はその後母親と暮らす道を選択しなかったのだという。まだこれから先のことはわからないけれど、彼女なりに悩み、苦しんで出した答えに違いない。
けれどその顔は決して悲観してなどいない。
「だから志保おねえちゃん達は責任重大だからね?! 皆の憧れと期待を背負ってるんだから。間違っても浮気とか離婚とか、ぜーーーーーったいにしちゃダメだからね!!」
「なっ…?! し、しませんっ! するわけがありませんっ!!!」
「あはははっ!」
飛び出すセリフがすっかり大人顔負けになっていて、しんみりしていた空気もあっという間に吹っ飛んでしまった。
「そろそろ時間だから行くよー!」
「はぁーいっ! じゃあおねえちゃん、行こっ!」
「…うん。よろしくお願いね」
「任せておいてっ!!」
差し出されたまだまだ小さな手に自分の手を重ねると、志保はくすっと微笑んだ。