いつかあなたに還るまで
その時ふと胸元に入れていたスマホが震え始める。
取り出して見てみればそこには予想通りの名前が記されていた。
「今回の話はあいつと別れるにはちょうどいいタイミングになったな。…まさに渡りに船ってやつか」
そう独りごちると隼人の口元からクッと笑いが零れた。
震えが止まるのを待ち、素早い動きでその番号を着信拒否にしていく。
設定が終わると『里香子』と書かれたデータを全て消去し、一通りのことを終えると無造作にスマホをソファに投げた。
そして再び背もたれに寄りかかるように体を倒して目を閉じる。
「最後に勝者になるのは俺だ…」
呟いた言葉は誰もいない部屋に静かに響き渡った。