いつかあなたに還るまで
「志保は一人じゃない。これから先はどんな時でもずっと、俺が傍にいて支え続ける。…だから、もしも何かに悩んでいるのなら、一人で抱えこんだりしないでもっと頼ってくれていいんだ」
「はや、とさ…」
なんとか口にした名前はほとんど聞こえなかっただろう。
それでも隼人は心の底から嬉しそうに微笑み、そうして志保の額にキスを落としていく。言葉などなくとも「愛してる」の想いが流れ込んでくる、そんな優しいキスを。
「はやとさっ…はやとさんっ…!」
ぶわりと溢れ出た涙と共に目の前の首にしがみついた。
浮き上がった体ごと支えるようにすぐに大きな手がぎゅうっと強く抱きしめ返してくれる。当たり前のように触れることができる温もりに、志保は縋り付くようにわんわん声を上げて泣いた。
「はやとさっ…ごめ、なさっ…ごめんなさいっ…! わた、し、わた、しっ…!」
「どうして謝る? 志保は何も悪くなんかない。何も謝る必要なんかないんだ」
包み込むように優しく語りかける声に、ますます自分が情けなくて涙が止まらない。
「わた、しっ…うれしい、のにっ、それよりも、こわ、くてっ…」
「うん」
「もしまたあんなことがあったらって思うだけで、こわくて、たまらなくてっ…」
「うん」
「言わなきゃいけないってわかってるのに、言えなく、てっ…!」
「うん…うん。いいんだよ、志保。それでいいんだ。それが当たり前なんだから。不安になるのも怖くなるのも何らおかしなことじゃない。だから謝らなくていい。自分を責めたりしないでいいんだ」
「は、や、とさっ……うぅーーーっ…!」
ぷつりと緊張の糸が解けると、志保は全てを受け止めてくれる大きな腕の中で一人で抱えていた全ての不安を吐き出すように泣き続けた。