いつかあなたに還るまで




「…まだはっきりとはわからないけど…赤ちゃんが、できたかもしれません」

長い時間をかけてようやく落ち着きを取り戻した志保がぽつりと呟くと、大丈夫だと伝えるように隼人の手に力がこもった。きゅっと目の前の服を掴むと、志保は胸に顔を埋めて隼人の香りを確かめるように思いっきり息を吸い込む。

「もしここに命が宿ってくれたのなら…信じられないほどに嬉しいと思うのに、それと同じくらい、…ううん、それ以上に怖い…と思う自分がいるんです…」

絶えず頭と背中を撫で続けてくれる温もりに促されるように、志保はずっと言えずにいたことを打ち明けていく。

「ほんの少し…お腹に痛みが、あって…。あの時と似てるって思ったら、不安でどうしようもなくてっ…」

また震えだした声と体を落ち着かせるように、隼人は真っ赤に濡れた志保のまなじりに優しいキスを繰り返す。滲んだ涙は吸い取って、しまいにはくすぐったさに耐えきれなくなった志保がほんのり笑ってしまうほどに、何度も、何度も。

「……志保。不安になるのは当然のことなんだ。絶対に大丈夫なんて無責任なこと、俺には言えない。でもこれだけは忘れないで欲しい。志保は一人じゃない。どんなときでもずっと俺が傍にいる」
「隼人、さん…」

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