いつかあなたに還るまで
震える唇をきゅっと噛みしめると、志保はゆっくり、大きく頷いた。
まるで何かを自分に言い聞かせるように、何度も、何度も。
「…明日、病院に行ってみようと思います」
そうして意を決したようにそう口にすると、隼人も大きく頷き返した。
「俺も一緒に行くよ」
「…えっ?!」
思いも寄らぬ申し出に、もとから大きな目がさらに大きく見開かれる。
「そんなにびっくりすること? 言っただろ? どんなときでも志保の傍にいるって」
「で、でも、お仕事は…」
「そんなことは気にしなくていいよ。必要な時に休むのは与えられた当然の権利だし、第一、少し休んだくらいで文句言われるような仕事はしてないつもりだから」
「……」
いいのだろうかと戸惑いを滲ませる志保の額にこつんと隼人の額がぶつかる。
「志保。余計な事は考えないでいい。志保はどうしたい? 一人で行きたいと言うなら無理強いはしない。でも少しでも志保が望んでくれるなら、俺は喜んで行くよ」
「隼人さん…」
至近距離で見つめ合う瞳は互いの姿だけを映している。
透き通るように綺麗なその輝きに、自分を覆い尽くしていた不安が流されていくような気がした。
「……一緒に、来てもらっても、い…」
「もちろんいいに決まってるよ」
おずおずと尋ねた志保に被せるように即答で返すと、互いに顔を見合わせてくすりと笑いあった。