いつかあなたに還るまで


今から2年前、20歳を目前にした時も同じようなことがあった。
祖父に見合いを勧められたのだ。

自分の立場は自覚している。
財閥の孫娘として、いずれはそれなりの相手と結婚しなければならないのだろうということも。

だが、2年前に勧められた相手だけはどうしても受け入れられなかった。
何度か祖父に言われて参加したパーティの場でその相手と接する機会があったのだが、裏表の顔が激しすぎる人だった。西園寺家ほどまでとはいかなくとも、それなりの家柄の息子である20代後半のその男は、祖父の前では媚びへつらい、見知った相手ばかりになると酷くぞんざいな態度ばかりだった。
偶然見てしまったのだ。

しかもそれだけではない。
何度か会話をすることがあったが、ひとたび祖父の目が離れると何かと体に触ってきた。偶然を装って何度も何度も。不快感に耐えられず視線を送ると見るに堪えられないほどの卑しい顔でニヤニヤと笑っていた。
嫌がっているのを楽しんでいるのだ。

祖父の付き合いの場で恥をかかせるわけにはいかないと必死で耐えたが、その相手とよもや見合いをして欲しいと言われたときにはもう我慢などできなかった。



生まれて初めて家出をしたのだ。

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