いつかあなたに還るまで
「ちょうど10週目に入ったところですね」
カルテとモニターを交互に見ながら医師がはっきりとそう告げると、志保と隼人はどちらからともなく握り合った手にきゅっと力を入れた。
「わかりますか? ここが頭ですよ。まだ小さいけれどちゃんと人の形をしているでしょう?」
「…はい…わかります…」
モニターを示しながら説明をしているのは5年前と同じ女医だ。
あの時は豆粒ほど小さくてそれが人だなんて実感がわかなかったけれど、今見えているのは小さいながらもはっきりと人間だと認識できる形。
ここに、いる…
そう実感した瞬間、言葉にできない喜びが溢れ出す。
数え切れないほどの不安や怖いという感情が湧き上がる隙間もないほどに、自分を埋め尽くすのはただ嬉しいという想いだけ。
___ここに、再び尊い命が戻って来てくれたのだと。