いつかあなたに還るまで
「もう今にも出てきそうですね」
そう言われた志保のお腹は言葉通りにぱんぱんに膨れ上がっている。
「早く出てきて欲しいような、まだここにいて欲しいような…。なんだか不思議な気持ちなの」
座っているだけでも圧迫感で難儀そうにしながらも、その表情は幸せ一色に染まっていた。大きなお腹を撫でる姿は母性に満ち溢れている。
宮間はそんな志保を見て眩しげに目を細めた。
「お腹の中にいる時からこれ以上ない愛情を両親からもらって、この子は幸せ者ですね」
「…だといいのだけど」
「そうに決まってるじゃないですか。できる限り病院にも付き添って、何をするにも騎士のように志保様のお傍を離れない。たまに見かけるだけでもそうなんですから、二人きりの時には一体どれだけ溺愛されていることか。想像するまでもありませんね」
「そ、それはっ…!」
身に覚えがありすぎるくらいにあるのだろう。何を思いだしたのかなど知る由もないが、みるみる志保の全身が真っ赤に染まっていく。
結婚して一年以上が経った今も尚、新婚ホヤホヤのようなその姿は見ていて微笑ましかった。
「…お幸せそうで何よりです」
「宮間…」
心の底から伝わってくるその言葉に、じんわりと胸が温かくなる。