いつかあなたに還るまで
その言葉に隼人は志保の両親が既にこの世にいないということを昌臣から聞いていたことを思い出した。詳しい事情までは聞いていないが彼には一人娘がいて、その娘の子どもはただ一人。つまりは志保だ。
その志保の両親が亡き今、昌臣にとって直結の身内は志保だけということになる。
「…そうですか。きっと素敵な思い出なんでしょうね」
「…そうですね。まだ小学生にもなっていないほど小さな頃の話ですけど、さっき色々と見ているうちに不思議と思い出してしまいました。…とても楽しかったですね」
そう話す言葉とは裏腹に、志保の表情はどこか晴れない。
きっと両親のことでも思い出して感傷的になっているのだろう。
志保の顔を見ながら隼人はそんなことを考えていた。
「…霧島さんは?」
「え?」
「霧島さんにもそういう思い出はありますか?」
これ以上深い話にならないようにと切り返した質問だったが、何気ないその言葉に隼人の顔色が変わったのを志保は見逃さなかった。
それはほんの一瞬だけ。
ほんの少しでも目を離せば絶対に気付かないほど一瞬だけ。
彼の瞳が恐ろしいほど冷たく光った。