いつかあなたに還るまで
「今日は楽しかったですか?」
自室に戻った志保に紅茶を入れながら宮間が口を開く。
志保は窓際に立って外の景色を眺めていた。
「そうね…。男性と二人きりで出掛けるなんて初めてのことだから緊張しっぱなしだったけど。…水族館にも行ってきたわ」
その言葉にカチャカチャと動かしていた宮間の手が止まる。
「水族館…ですか?」
「…やだ、何て顔してるの? 私ももう子どもじゃないのよ? 何も心配しないで。大丈夫だから」
動きを止めたまま心配そうに自分を見つめている宮間に振り返ると、志保は苦笑いする。
「そうですか…志保様が少しでも楽しまれたのなら何よりです。またお会いするおつもりで?」
「…えぇ。もう少しあの人の真意が見えるまでは会ってみようと思ってる」
テーブルにゆっくり紅茶を置いた宮間の顔が志保を捉える。
「大丈夫よ。私だってこれでも色んな人を見てきたんだもの。本当に危険だと思えば深入りしない」
「…うですね。志保様の直感は嘘をつきませんからね」
「何それ。大袈裟でしょう」
ふふっと笑うと志保はソファに腰掛けて紅茶を口にした。