いつかあなたに還るまで
一般人というとどこか語弊があるが、職業的に政略的な要素は考えられない。
もちろん外務省に勤めている、ひいては官僚だということを考えればエリートであることに違いはないし、世間的に見ても立派な職業だ。
だが、結婚後の双方の利益を考えれば普通には選ばれない相手だろう。
ウィンウィンの関係を保つため。そのための政略結婚であるはずなのに、それに全く関係のない相手を何故自分に会わせようとするのか?
ずっと引っかかっていた。
まさかいずれ婿入りでもさせるつもりなのだろうか…?
「何故…か。難しい質問だな」
物思いに耽っていたところで昌臣が口を開いたのに顔を上げる。
見れば顎に手をあてて考え込むような仕草をしていた。
「言葉にするのは難しいな。だが…彼には何か感じるものがあった」
「何か…?」
一体どういうことなのだろうか。
「彼の心には何か抱えているものがあるように見えてね。…志保、お前とどこか通じるところがあるんじゃないかと思ったんだよ」
思いがけない言葉にハッと息を呑んだ。