いつかあなたに還るまで

もしかして…彼は気付いている?
私がどういう気持ちを抱きながらこの場に立っているのか。
本当はこんな場所にいたくなんかないということを。

だから…?
だからわざとこうやっておどけてみせているの…?

彼の何を知っているわけでもない私でもわかる。
本来彼はこんなことをするような性格じゃないってことくらい。

そんな彼が、わざと…

「志保さん? どうしましたか?」

油断すると込み上げてきそうになる涙をグッと堪えると、志保はこれまでの戸惑いが嘘のような笑顔を作って見せた。

「…いえ。そうですね、せっかくこうして食べたい放題なんですから。思う存分食べちゃいましょう!」

その表情の変化に気付かないうちに隼人自身見入ってしまっていたが、やがてフッとその目元が緩まる。

「クスッ。その心意気です。では今日は食べ比べですね」
「はい!」

そんな2人が醸し出す雰囲気に驚く周囲などには目もくれず、クスクスといつまでも互いの顔を見合わせながら笑い合った。

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