いつかあなたに還るまで
「あなたのやったことは我儘なんかじゃない。あなたはただ敷かれたレールに乗らずに自分で未来を選択しようとしただけのこと。それを我儘と言うのなら、この世は我儘な人間だらけになってしまいますよ。…もちろん私もね」
「霧島さん…」
「でもそうですか。彼とのお見合いが嫌で逃げ出した…くくっ…! あ、すみません、笑ったらだめですね。でも私まで爽快な気持ちになってしまいましたよ」
「えっ? …ふふっ」
きっと彼には全てが理解できたのだろう。
そこまでしてでも断固見合いを回避した志保に対する染谷からの風当たりが、それ以降より一層激しいものへと変わっていったということを。なかなか会えずようやくその機会に恵まれたかと思えば、引き連れていた男がいくらエリートと言われる職種だとはいえただの公務員に過ぎなかった。
それが彼のプライドを傷つけたのだろうということも。
「霧島さんにとってはとんだとばっちりだったので…やっぱりごめんなさいと言いたいです」
「ある意味面白いものを見られたので僕としてはお礼を言いたいくらいですよ」
「え?…ふふっ、そう言ってもらえると救われます。ありがとうございます」