いつかあなたに還るまで
相も変わらず肩書きでしか人を見られない低俗な連中には反吐が出る。
どこへ行ってもああいう人間は一定数いる。
何の苦労も、何の努力もなしに、ただそこに産み落とされたというだけでこの世の全てを支配したかのような錯覚に陥る愚かな人間が。
いくら血を吐くほど努力を重ねたとしても、どんなに這い上がったとしても、生まれ持った血筋というものは永遠に変えることはできない。
「だったら奪ってやればいい」
心の中の呟きが声となっていた。
自分でも驚くほどに低い音を伴って。
目を閉じると今も鮮明に浮かんでくる。
己を嘲笑う人間達の醜い顔、悔しさに顔を歪める自分、
…そして泣きながら謝罪を繰り返す母の姿が。
それと同時に浮かんできた志保の笑顔に、グラスを握りしめた手に無意識のうちに力がこもった。