いつかあなたに還るまで
「…忘れるな。お前は何のために今日まで死に物狂いでやってきた」
あの日誓ったことを決して忘れるな。
お前は目的のためなら自らを偽ることも厭わない。
人を欺くことにも何の迷いも抱かない。
…そう。所詮相手は裕福な家庭で育った小娘だ。
何の苦労も知らず、真綿で包まれるように育てられた女。
初めての反抗がたかだか家出?
バカバカし過ぎて本気で笑えた。
「一見至極正論を言っているようで所詮机上の空論だな。社会に出たこともない、何の苦労もしたことのない人間に何がわかる」
本気で自分を貫く覚悟があるのなら、家を捨てるという選択だってある。そうせずにその程度の抵抗を見せただけで温室に戻ってきたのは他でもない彼女自身。
結局あの環境を捨てる勇気などないのだという何よりの証拠。
とはいえ自分にとってはかえってそれこそが好都合なのだが。
このままエリート街道と言われる道を突っ走ったところで辿り着く先はたかが知れてる。謀らずして転がり込んできたこの千載一遇のチャンスを、みすみす無駄にしてなるものか。
迷うことなど決して許されない。