オレンジプラネット
「き、喜多さんから?」
「あー、うん」

ちょっとわりぃ、と言って千里はケータイを開いてまたすぐに閉じた。あたしが前にあげたネコのストラップが揺れる。
汚くなっちゃてるんだからはずせばいいのにと思うけど、実際はずされたらきっと寂しいだろうななんてぼんやり思う。

「返信打つの早くない?」
「返信してないよ」
「いいの?彼女でしょ?」
「は?なに言ってんの?」
「え、だって告白されたんでしょ?」

あー、うん、まぁ、とだけ答えて千里はまたボールに手を伸ばす。サラサラの黒い短髪が静かに風に揺れている。

千里は、悔しいけれどかっこいい。

同い年とは思えないくらい落ち着いた雰囲気を持っているけど、実際はくだらないことに一生懸命で面白いことがあれば小さな子供みたいにはしゃいだりする。

そのギャップにがっかりする人もいるみたいだけどあたしは違った。知れば知るほど一緒にいたい、一緒にいて楽しいと思った。

ぜんぶひっくるめて千里のことが好きだった。そんなことぜったい言えないけど。
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