オレンジプラネット
「なんかさ、そういうのじゃない」

驚きと安堵と罪悪感。あたしはなんて言っていいのか分からず黙って千里の次の言葉を待っていると、千里はコートの真ん中にあぐらをかいて座った。

それにつられてあたしも座る。地面がひんやりと冷たい。

「夏休み前、おれが東京の高校行くって決断したときに最初に言ったのは喜多なんだ」

そうなんだ、と平然を装ってみても胸はチクリと痛んだ。誰に一番に言うかなんて千里の自由なのに、 そんなことでショックを受けた自分は、よく千里に言われている通りアホだと思った。

「たまたま喜多に志望校聞かれてさ。教えた ら頑張ってねって言われたんだ。単純にすげぇ嬉しかった。ほら、東京の高校に行くこと皆に反対されてたじゃん?」

ボールをころころと膝の上で転がす千里。 あたりを見渡せばもうすっかり暗くなってい た。千里もあたしも吐く息が白い。

「そんでそのあとすぐ茜に志望校の報告しに 行った。そしたらお前、同じように頑張れっ て言ったんだ。でも、お前に言われたときは 嬉しくなかった。寂しかったんだよ」

「寂しかった、って…」
「応援してくれてるのはもちろん嬉しいけ ど、おれと離れて寂しくねーのかよって。お れは寂しかったから。そんで分かったんだよ ね」

ボールへと向けられていた千里の視線があたしを捉えた。空が、高い。

「あぁ、おれ茜のこと好きだなって」
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