今日も、私は、なく、【完】
彼女に、あたしの存在がばれてしまえばいいと思ってる。最低かな、あたし。
でも、だって……。
葛藤を繰り返しているうちに、どんどん一宮さんとあたしの距離は縮まっていて、
――ついに顔を上げた彼と目が合った。
その証拠に、一瞬だけだけれど一宮さんは驚いて目を見開いて、歩くスピードが落ちた。
あと数メートルですれ違う。
一宮さんはあたしに何か言うだろうか。
彼女は何も知らずに、幸せそうなまま微笑んでいる。
――あたしの大好きな一宮さんと、あたしを大好きにならない一宮さんと、その横にいる権利を持った彼女。
今、一番傷つくのは誰だろうか。
「……ちょっと、大丈夫? 絢子?」
心配そうな朝日にも何も言えず、じっと彼を見つめていた。
もう一宮さんは目の前にいる。あと、数歩。
「え……」
だけど瞬きして呼吸を止めた一瞬、一宮さんはあたしから目をそらし、何事もなかったかのように、
――そのままあたしのすぐ横をすれ違っていった。