今日も、私は、なく、【完】
ツー、ツー、と無情に鳴り響く機械音を聞きながら、流れる涙を拭うことなくその場に少しの間立ち尽くしていた。
カーテンの隙間から差し込む光が、どうしようもなく悲しくて、憎い。
――今日も、私は、泣きます。
愛しい人を精一杯愛せるようにと、自分のために。
彼に会う度に苦しくなるのに、比例してもっと好きになる。
ずるずる、ずるずる。
罪悪感なんて、とっくに感じなくなっていた。
――だからきっと、一宮さんはあたしを、好きにならない。
可愛い可愛い、背の低いあの子以外を、好きにはならない。
あの子はどうして一宮さんを離さない。どうしてあたしにくれないの。
――一度だけ、一宮さんの付き合っている人を見たことがある。
街で偶然見かけただけだけれど、すごく綺麗で、背の低い女の子らしい人だった。
二人とも、あたしの存在には気付いていなかったから、こっそり後をつけた。
自分でもバカだし、何をしようとしているのかも分からなかったけれど、最後までばれることはなかった。