今日も、私は、なく、【完】
アイスクリームショップに入ったお似合いの二人を、ペットショップではしゃぐ彼女を、その人の服を見立ててあげる彼を、ドラマでも見ているかのように客観的に眺めてた。
陽が沈む頃、一宮さんと彼の好きな天使のような悪魔は、小さなアパートの中へと姿を消す。
そのあと、泣きながら家に帰った。
だってあたしは、一宮さんとアイスを食べたことも、犬を撫でたことも、プレゼントをもらったこともない。
――自分から望んで堕ちた外道を、初めて後悔した。
それでも彼から離れることを選ばなかったあたしは、相当なバカなのかもしれない。
スマホを机の上に置いて、窓際に座りカーテンを少しだけめくって、ぼーっと空を眺めた。綺麗な青で、雲ひとつない。
だけどこの美しい空の下を、あたしと一宮さんが並んで歩くことはない。一生。
その代わりに、月さえ出ない真っ暗な夜空の下、隠れるように小さくなって、ホテル街を歩く。
――あの子と同じ幸せを、あたしは味わうことができません。
一宮さんは、あの子と同じ愛をあたしに捧ぐつもりがありません。