今日も、私は、なく、【完】

















『――頼むから、おれが起きる前に、家に帰ってな』


『どうしてですか』


『目が覚めて、絢子ちゃんを見たら、寝ぼけて彼女の名前を呼んじゃうかもしれないから。そんなん嫌だろ?』




――最初にエッチしたとき、彼は悪びれる様子もなくおどけて言って、あどけなく笑った。




『……それは』




“誰への気遣いですか”


あたしの、それともあの子へのどちら。



そんなの聞かなくとも答えは分かり切っていたことで。あたしが彼女に勝てるわけなくて。




『そうしてあげる』




嘘を吐かれても本当のことを言われても傷つくような気がしたから、喉元まで出かかった言葉を本能的に呑みこんだ。











――そんなことがあってから、あたしは彼と共に目を覚ましたことがない。


必ず早起きして、身支度を整えて先に部屋を出る。


家に着く頃一宮さんからの電話に出て、切って、シャワーを浴びた。


それがあたしの週末の過ごし方。



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