今日も、私は、なく、【完】




***



「絢子、駅前にね? 新しいケーキ屋さんができたんだって」


「へえ。あそこらへん、スイーツ店が多いよね。競争激しそう」


「うん、だから今日、行かない?」




大学の講義が終わって、高校からの友達の朝日が人懐っこくあたしの服の裾を引く。


確か、3日前にも彼女に誘われ、新しくオープンしたというケーキバイキングのお店に連れて行かれたばかりだった。




「ええ、あたし、もうしばらくケーキは見たくないんだけど」




甘党の朝日も、あれだけのケーキを食べたあのときばかりは具合が悪そうで、さすがに懲りただろうと思ってたのに。




「大丈夫だよ、これがあるから! ほら!」




自慢げに朝日が見せびらかすそれは、ケーキひとつ50円引きのクーポンだった。


よほどケーキが好きなのか。ミーハーなのか。



――ああ、でも今日は。




「ごめん、それ以前にあたし、今日は別の人と約束があるんだよ」


「えー!?」




あからさまにがっかりした表情を浮かべる彼女に苦笑して、ごめんね、ともう一度謝る。



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