音楽が聴こえる
「ここで喧嘩が始まるとか?」

いつの間にかミネラルウォーターのペットボトルを両手で抱えた香田が、ステージに上がって来た。

「ガキじゃあるめーし、するかよ」

俺の言葉に香田が口を曲げた。

そのツラは充分子供とでも言いたげで、俺は癇癪玉が炸裂しそうになるのを飲みくだす。

……流石にここでキレる訳にはいかねーし。


香田は俺達四人にペットボトルを手渡してから、謙二をステージの端に手招きした。

すると謙二は意外なほど真面目な面持ちで頷く。

二人のいたく真剣な顔を横目にペットボトルの蓋を捻った。

「何話してんのかね」と斗夢は肩を竦めて、二人に興味深そうな視線を送る。

「どうせ俺の悪口だろーさ」

山路はすっかりイジケちまったらしい。
……めんどくせー奴。


暫くすると「山路君」と香田が声を掛けて来た。

山路は俺?と自分を指差しながらも、香田の方へ吸い寄せられるように歩き出した。
< 100 / 195 >

この作品をシェア

pagetop