音楽が聴こえる
10.古い友人

side 茉奈

◇◇◇
「まーなーちゃ……」

「うわっ」

練習時間も終盤に差し掛かり『SPLASH』の演奏を聴いていた時のことだった。

目を閉じていたあたしの首回りに突然、衝撃が走る。

驚いて目を開けると、ヘアマニキュアの店頭見本のようにサラサラしたラズベリー色っぽいショートボブが、あたしの視界に髪を足らした。

「佐由美さんっ!! 」

あたしは抱き締められたまま、驚いて椅子から立ち上がった。

でも当の佐由美さんは腕を緩めると、あたしの頭の天辺から靴先まで視線を二往復させて大きく笑った。

「何……その……た格好。中学生……のがお洒落……よ」

斉賀達の演奏で、佐由美さんの話しはところどころしか聞こえない。

まあ、あたしのイケてない格好に苦言、ってとこだろう。

「なーんーでーこーこーにー?」

あたしは声を張り上げた。

「でんわ……のにでない…なかやんにきいた……」

うん? 悟に聞いた?
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