音楽が聴こえる
「多分? ケンカ?」

「うーん。今ね、冷却期間中」

佐由美さんは、はっきりとは答えない。

「……何、冷ましてんだか」

ダイちゃんは『infinity』のドラマーで、元々無口なタイプの人間。職人肌の頑固者だけど、たまに笑うとやたらと可愛いくて、そのギャップに心を掴まれてしまう。

佐由美さんは、ここまでずっとダイちゃんを支えて来た。


ダイちゃんを追い掛けて、美容師の仕事も住みかも都内に移した彼女は、潔い人だと思う。


「茉奈ちゃんこそ……どうなってんの」

佐由美さんは本音トーク炸裂の人だから、嘘や誤魔化しが効かない。でも、ここで個人的な話しをする気も無いけど。

斉賀達の視線は、今も私達の方を向いてるし。

「あの子ら、あたしの行ってる学校の生徒なの」

「わおっ。教え子って奴? なんて心地の良い響き」

「……佐由美さん、変な想像要らないし」

あたし達がくだらないことをキャッキャッと言い合ってるうちに、高城はベースを置き、こちらへと歩いて来た。

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