音楽が聴こえる
悟も「仕方ねぇなあ」と言いつつも、佐由美さんのハグを受け入れた。


「よう、謙二達は終わりにするんか?」

悟は、ようやくはっきりと目覚めたらしい。
足取りも先程までとは全く違う。

「はい。悟さん、ありがとうございました」

高城は頭を下げる。

「や、俺達も礼を言わせて下さーい」

山路達もペコリと頭を下げた。

「来週の土曜どうする? 午前中、学校あんだろ。夜の対バンでも、景気付けに出とくか?」

この間みたいに、バンドが何組か出演するライヴがあるんだ。

「いいんですか?」

「セットリスト早めにこいつに渡しといて」

悟はあたしを親指で差す。

ライヴ前の計画表みたいなものなんだけど。

「そんなのメールで良くない?」

「今事務所の、プリンターの調子悪いんだよ」

「経費で買えば? どうせ家庭用ので良いんでしょ?」

「あっそ、んじゃ後で、お前の眼鏡とお前のブッうっっっ……痛ってェ!!」

あたしの肘を鳩尾に喰らった悟は、腹をさすり始めた。

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