音楽が聴こえる
この男はアホなんじゃないか?

佐由美さんとあたしの生徒の前で、何言おうとしてんのっ?!

「センセー、容赦ねぇなあ」

「……シビレるぅ」

斉賀と山路の感想に、あたし以外は笑ってる。

「お前よー腹パンチとか肘鉄とか、俺の内臓壊す気かよ」

悟はまだ自分の腹を撫でている。

「……もーう、相変わらずだね、茉奈ちゃん達は。兄妹喧嘩みたいにやらかして」

佐由美さんは大げさに溜息を付いてみせた。


「えっ、悟さん達って兄妹なのかよ?!」

そこに食い付いて来たのは、意外なことに斉賀だった。

「ち・が・い・ま・すっ」


昔、父が悪のりして悟のことを『息子』なんて
呼ぶものだから、周りの人間は混乱していて。

あたしを腹違いの妹位に思って、悟との恋愛相談をしてくる彼女達や橋渡しを頼む女達に、辟易していた高校時代を思い出す。


あの頃は、何であたしが? という戸惑いと、何だってこんなに彼女がコロコロ変わるのかという、悟に対する苛立ちと。そんな気持ちが大半を占めていた。

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