音楽が聴こえる
やんちゃ盛りの高校生よりも大人の背中になった、大学生の頃の悟。
大人な分タチが悪くて、ムカついた。


「こんな兄貴お断り」

昔の記憶が、あたしの眉間に皺を作らせる。

それを見た悟はヘラヘラ笑う。

「最もだ。お前と兄妹なんて有り得ねぇ」

悟は煙草を取り出し銜えると、笑いながら火を点けた。


「そう言えば悟さん、チケットノルマは?」

高城が思い出したように悟に尋ねる。

「んなもん、出世払いで良んだよ」

「でも、それって他のバンドに悪くないですか」

やっぱ基本が真面目なんだね、策士高城は。

「オーナー俺、決めんのも俺。……大体な、うちは大したノルマなんて課してねーだろ? そんなことしてたら育つもんも育たねぇだろうが」


父もいつも、そう言ってたっけ。

だから最後の方は経営が苦しくて、借金が出来ちゃったんだけどさ。
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