音楽が聴こえる
斗夢が隣りに座る俺の脇腹を肘でつつく。

山路と斗夢が朝田梨花とその周りにいる女達について批評し始めたので、俺は文句を諦めて窓の外を向いた。



「失礼しますっ。お待たせしましたっっっ」

暫くすると甲高いウェトレスの声が、俺達のくだらねえ話しを遮るように響いた。

どうやら今までの話しは、しっかり聞かれていたようだ。

その証拠に姉ちゃんは、派手な音を立ててランチプレートを置いた後、汚いもんでも見るような白い目で俺等を見回した。

でも悟さんが「実里ちゃん。皆、食後にアイスコーヒー頼む」と名前を呼んだ途端、悟さんにだけ超特大ビッグスマイルを浮かべた。

その眼差しは憧れが滲んでいて。


「……分っかりやすっ」

その姉ちゃんがテーブルから離れた後、俺は思わず呟いた。

「若い子の夢は壊すわけに行かねぇだろ？ 」なんて、悟さんには一蹴されちまったけど。


「 さぁ、食うぞー」

両手を合わせた悟さんに習って、俺達もガキの頃の給食みたいに、頂きま~す、と声を合わせた。


< 115 / 195 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop