音楽が聴こえる
悟が高校生の頃に組んでいたバンドは卒業と同時に散り散りになった。

そのため彼は、大学進学と同時に新たな仲間を募り、そして彼等を見付けた。


あたし的には、悟が大学に行ったこと自体が驚きだったけど、彼には彼なりの親に対する意地があったようだ。

父が珍しく常識的なアドバイスを送ったことも影響したと思うけど。

『役に立たない知識なんて無いだろ』なんて、あのマイペースで永遠の少年な父が口にするとは正直思わなかった。

それは丁度、高校生になったあたしも家の手伝いと称し『ブルーバード』に頻繁に出入りし始めた頃のこと。


あたしの青い想い出は全て『ブルーバード』から始まった。

ーー そして終わりも。




「……ずっと一緒だったよ」

あたしの答えに佐由美さんの絹のような髪が、揺れた。

「そっか」

佐由美さんはいきなり、煽るようにグラスの中のビールを胃袋へと流し込み始めた。

あたしが面食らってその様子を見ていると。

彼女があまりにも勢い良くグラスを置いたものだから、木のテーブルから『タンッ』と乾いた音が響いた。
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