音楽が聴こえる
実は、そんなに視力は悪くない。

でも初めて教育実習で教壇に立った時、自分のこの顔って結構なめられると気が付いた。

オトモダチ感覚は許せても実際のところ、あたしは友達でもなければ、恋愛対象でも無い。

大人と子供の境目で曖昧な彼等は、繊細と思えば大胆で、優しいと思えば意外と冷酷で。

そんな彼等と、まだ教師3年目の経験も浅いあたしが対峙するには、武装も必要なのだ。

多少イケてなくとも。

あたしは、取っ手を外したなべとタッパーの入ったバッグを肩からぶら下げて外に出た。


悟の住むマンションは歩いて5分のところにある。ここらでは一番デカい。

外に出ると嫌でも目に入ってくるマンションだ。

彼は自分を、裕福な家庭のスキマに生まれた子供だと、自嘲する。

ようは金持ちの愛人の息子ということらしい。

その金持ちの父親も亡くなり、有り余った遺産であのバカ高いマンションと、あのライヴハウスを買った。
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