音楽が聴こえる
「悪いっ」

俺は慌てて香田のオデコをガシガシ擦った。

ケースとはいえ、結構痛てぇはず。

「……っ普通に酔いが醒めるっての、痛いなぁ」

「悪い、あ、赤い」

直撃を喰らったせいか、俺が擦ったせいか知らねーけど、香田のオデコは既に赤くなってる。

その学校とは似ても似つかない姿が、今度は俺のツボに入った。

「ふっ、ククク……」

「ぶつけといて何、笑ってんの?」

鼻に皺を寄せて文句を垂れる顔が子供っぽい。

ずっと喜怒哀楽の薄い教師だと思ってた。

けど、こうやって関わるようになると、そのイメージは意図も簡単に壊された。


「ごめんて、センセ」

「……斉賀、ポテト追加ね」

やっぱ、面白れぇ女。

「生徒にたかる気かよ、ずっと飲んでたんじゃねぇの? センセ」

俺は笑いながら、香田の背中を押して歩くように促した時。

何気なく、さっきまで香田が眺めていたCDショップが視界に入った。


これ。

『infinity』のポスター、か。

……悟さんのこと考えてた?

何も映してねぇような目で、何見てた?


俺の胸の辺りが、ギシッと音を立てた気がした。
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