音楽が聴こえる
「ええ、前のが壊れちゃって」
「……もうコンタクトにはしないんですか」
あたしはコンタクトなんぞにしたことは、無い。
「大学生の頃は、そんなの掛けて無かったですよね」
大学生……。でも、早見先生とは出身大学も違うはず。
「僕も、昔。バンド、やってたんです」
早見先生は穏やかに微笑んだ。
「あの頃、僕より年上だと思ってたし。見た目も……。人づてに聞いた名前と、同姓同名の方かと思ってました」
はぁ。
「でも、斉賀達のバンドの顧問を引き受けたって聞いた時、やっぱり『あの彼女』なのではって」
要は早見先生は、あたしが『infinity』のメンバーだったのを知ってる人と言うことか。
まだ、疑いの段階?
「……人違いじゃないですか?」
私が素っ気なく資料を片付け始めても。
それでも早見先生の笑顔は途切れない。