音楽が聴こえる
あたしは別に『スター』と付き合ってた訳じゃない。

別れた相手が『アーティスト』として成功しただけだ。



あたしは斉賀達のいる視聴覚室へと、苛々しながら歩き出す。


大体、親切そうな顔して何なの。

憧れとか、訳分かんない。

……あれから、何年経ったと思ってんのよ。

早見先生の頭の中の勝手なイメージで、今時の高校生より青臭い好意を寄せられるなんて、御免だ。

これから早見先生と陵北祭……至極面倒。



苦い気持ちのまま、視聴覚室のドアに手を掛けたものの開けるのを躊躇してしまう。


……ああ。
苛立ちを彼等にぶつける訳にはいかない。

例え彼等に関わったのが、間接的な原因であったとしても。


防音設備のある視聴覚室のからは、薄っすらとしか音は漏れて来ないけど。

ライヴハウスで練習してた曲が聴こえる。


斉賀の伸びやかな歌声の周りで、音が楽しそうに跳ねていた。

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