音楽が聴こえる

side ジュン

◆◆◆
酒に酔ったあいつと出会って以来、俺は意識的にあいつを見ないようにしていた。


あいつの授業は、俺の転た寝タイムのはずだった。

今までは、心地良い声が脳みその奥の方まで響いて、俺を眠りに誘ってたのに。

ちっとも眠れやしねぇ。

声を聞くとCD屋の前で立っていた、あいつが頭を過る。と、同時に忘れ難い俺の感情が沸き上がる。

これが、厄介だった。


何が惹かれんのか、何に惹かれてんのか、自分でも分かんねぇ。

答えが見付けられねぇもんは、好きじゃない。


っとに、集中出来ねぇし。


でも、謙二の野郎は俺の歌がエモーショナルになって来たと、意味不明な薄ら笑いを浮かべてる。

はじめは茶化してんのかと思ったが、本人は誉めてるつもりらしい。


ーーー
視聴覚室に入って来た香田は、いつもと違う雰囲気を漂わせていた。

その思い詰めた顔から目が離せず、歌いながらも、目があいつを追ってた。
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