音楽が聴こえる
13.予期せぬ訪問者

side 茉奈

◇◇◇
薄暗いこの階段を何度、往復して来たのだろう。

初めは父に連れられて。

いつしかバンド仲間と共に。


今は『SPLASH』を聴くために、あたしは階段を下りている。


酒に酔ったあの日の帰り道、ちゃんと帰れるかと斉賀から過度の心配を受けた。

でも、まさか生徒に自宅まで送って貰うなんて、恥ずかし過ぎて出来る訳も無くって。

それならば、何かあったらイヤだから家に着いたらメールして、と真顔で言われてしまった。

高校生の男の子でも紳士的な心配の仕方をするんだなぁと、素直に感動した私は、結局彼の求める通り、メール交換なんてしたんだけど。

これが裏目に出た。

昨日の夜、大量の『来て来てメール』が届いたのだ。

そのメールは、うん、と言うまで止まらず、根負けしたあたしがここに来た次第。

斉賀がそんなベタな手を使うとは思いもしなかった。

悟の家でも定期的にバイブ音が鳴るものだから、何のタイマーだよ、と首を傾げられた。
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