音楽が聴こえる
急に空腹を思い出し、あたしはキッチンへ向かった。

コーヒーメーカーとマグカップ以外、使った形跡が無いキッチン。

冷蔵庫の中は、やっぱり水だけ。

この間冷凍したご飯も、やはり手付かずのままだ。

……悟って、食生活悪すぎ。

持ってきた鍋をIHコンロに置いてしばらくすると、換気扇を回してもカレーの香りが部屋を満たした。


ようやく用意したご飯にありつこうとした時、玄関の扉が開く音がした。でも三秒もしないうちに、物凄い勢いでキッチンに飛び込んできた。


「カレー!!」

「悟、おかえり」

「俺のは?」

おい、挨拶抜きかいっ。

「ヘイヘイ、カレーね」

あたしがキッチンに置いてある二人用のダイニングテーブルから立ち上がると、その後ろを付いてくる悟。

背後から、あたしのウェスト回りに巻き付けようとしたその腕を払う。

「手洗いなよ、悟」

「うっわ、冷てーな。茉奈ちゃん」

「マカロニサラダ、冷蔵庫に入れたけど?」

「あ、貰う貰う」
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