音楽が聴こえる
ちゃらっと洗ったその手をTシャツの脇腹辺りに塗りつけて、鼻歌混じりに冷蔵庫を開ける悟のテンションの高さに、息を吐く。

「……なんか良いことでもあった?」

「ん? フツー。お、マカロニすげー量」

大きなタッパーに大きな笑みを浮かべて、喜んでいるらしい。

「ビール飲んでいーか?」

「あんまり冷えてないけど」

「あれ、ホントだ。じゃあ風呂の後にすっかなー」

タッパーだけを冷蔵庫から取り出した悟は、何処か浮き足立って見えた。




理由が判明したのは、真夜中の夕飯が終わった後だった。

悟はコーヒー片手に、煙草を美味しそうな仕草でふかす。

あたしはその横で悟が持ってきた、今日の斉賀達のライヴ映像を見せられていた。

誰が録ったのか知らないけど、中々鮮明な映像だ。

歌ったのはオリジナルの5曲で30分ほど。

あたしが見た他の子達は映っていないことからも、録画の目的が『SPLASH』だったことは分かる。
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