音楽が聴こえる
「……で、どう思うよ」

悟は、クッションを抱きながら床にごろんと寝そべってる、あたしに聞いた。

「……いいんじゃない?」

答えに困る質問だ。

良いか悪いかと問われれば良いと思うけど。

「んだよ。ちゃんと見ろや」

悟の強い声にカチンとしつつ、それだけ彼等に入れあげていると嫌でも気付く。

「ドラムはスタミナ不足。5曲目のクオリティが明らかに下がった。ギターはミスが目立つ。目立ちたがり過ぎのせい。それに比べて、ベースが一番安定してた。ヴォーカルは声質が良い。高音部半音下がるのは癖かな。今回は無かったけと、バラードも聴かせられる歌声」

仕方がないから、思ったことを一通り口にすると悟は満足そうに頷いた。

「ご名答。はじめっからそうやって言えばいーじゃん、もったいつけてねーで」

「もったいなんて付けて無いし」

悟は煙草の火を消して立ち上がったかと思うと、床の上から睨むあたしの横にしゃがみこむ。
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