音楽が聴こえる
「……やな野郎だな。ひとの顔に息掛けんじゃねぇよ」

「不機嫌、垂れ流しか。そういう時のジュンは、話しになんないな」

謙二は肩を竦めて、俺に背を向ける。

当たってるだけにムカッとした。
……一体、朝っぱらから、何なんだよっ。

俺が全部悪いっつーのか?

嫌がらせ云々はともかく、香田が叩かれてんのは俺と関係無くねぇ?


俺はムカムカする腹を押さえて、自分の席へと歩き出した。

俺の席には相変わらず、隣りのクラスのはずの山路が座って、マンガ雑誌を読んでいる。

「お、ジュン君オハヨー。……っつー顔じゃねぇなー。爽やかさナッシングじゃん」

「煩せぇ。ひとの席でマンガ読んで憩ってんじゃねぇよ、マジむかつく」

机の上に鞄をドンッと大きな音をたてて置くと、前の席の斗夢が振り返った。

「こいつも謙二も、これでもお前のこと心配してるんだぜ」

だから大目に見てやれよ、と言われても俺の曲がった機嫌はそうそう直りそうもねーし。

俺は不貞腐れた顔を隠そうともせずに、机から離れた。

「ジュン、もうすぐ授業始まるぜ」

斗夢に呼ばれて振り返る。

「うっせー。……便所」

本当は一言何かを話す度、気分が悪くなっていく自分を止められなかっただけだ。


俺は人目を避けつつ、眠い時やサボる時にこっそりと利用する、普段は立ち入り禁止の屋上へと足を運んだ。
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