音楽が聴こえる
―― 何で、じゃねーよ。授業なんか出てらんないくらい傷心してんだよ。どっかの地味なセンセ―のせいだ。いたいけな高校生とのヤクソク破っといて、ムカつく。

俺の指が勝手に打ってるとしか思えねぇ。
乙女みてーな文だな、これ。

それでも今度は迷わず送信を押した。

憤りをぶつけたって、どうなることでも無いけど。
こうやってメールでもしなけりゃ、俺の悔しさなんてアイツは気が付かねぇ。

すぐに俺のスマホは震えた。

今度は長い奴だから、着信だと気付いて俺は通話ボタンをスライドした。

『……斉賀?』

香田の少し低い声が、耳元で俺の名字を囁いた。
その途端、心臓がドクッと音を立てて、胸の辺りが熱い塊を飲み込んだように痛くなる。

……何だ、これ?
え、俺。
香田の声聞いて、何、この反応。

『ちょっと、斉賀……君? 電話はシカトな訳? ッて言うより、君どこに居るの。授業中でしょ』

香田の声がさっきよりきつい音で発せられて、漸く俺が一言も声を出していないことに気が付いた。

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